2023年7月の日本経済新聞朝刊一面記事まとめ
今月の一面記事の傾向は「雇用・労働」分野に関係する記事が特に月の後半から突出して増えたことです。17日の「60代社員 現役並み処遇」と題したシニア人材の処遇を現役並みに改善する企業の動向を伝える記事をはじめ、18日「夏ボーナス最高89.4万円」、21日「雇用保険 目立つ「流用」」、22日「女性就業 25~39歳8割超す」、24日「留学生の就職先拡大へ」、27日「株式報酬で専門人材確保」まで、様々な切り口で伝える内容が揃いました。
この分野はもともと規模の大小や業種を問わず広く経営者層に関心を集めやすい領域でもあり、これから先しばらくは続くであろう【人手不足】を中心軸に今後はその対策としてAI化が拡充する状況や〇〇円の壁と呼ばれる働き方を阻害している制度見直しの方向性にも触れながら、引き続き一面を飾る機会が続くものと予想されます。
この領域と並んで関心を集めやすい「景況感」に関する記事は2件にとどまりました。
昨今のインフレ・物価高の状況がやや落ち着きを取り戻しつつある現状がその理由ではないかと考えられます。
新聞読者が関心を寄せにくい分野の一つが「日銀」や「金融政策」に関する記事ではないでしょうか。上記の分野などに比べると決して重要性に劣ることはありませんが「生活実感に乏しい」ことと併せて「仕組みを理解するのが難しい」ことがその理由として考えられます。
ご存じのとおり、今年4月に日銀総裁が10年ぶりに交代したことで、いわゆる金融政策の方向性に変化が起きるのではないか。との市場の観測を呼んでいる状況です。
今のところ植田新総裁は金融政策の方向性を変更する表明を行ってはいませんが、29日の一面は「長期金利上限、事実上1%」と題し長期金利の正常化へ向けて歩を進めた内容を伝えました。今の日本経済はわずかなショックでも金利の乱高下を呼び込みやすい環境に置かれていると考えられるため、今後の日銀のかじ取りに注目すべき状況が続くでしょう。
また、日銀政策決定会合の議事録等の詳細が定期的に公開される時期を迎えましたが、黒田前総裁がいわゆる大規模金融緩和を決定した当時の議論に関しても月の後半で伝えられ始めました。現総裁はこの10年間に行われた政策全般を「総括する」と言明していることから、今後期間をおいて順次公開される日銀内部の議事録に関して注目を集める場面が増えてくることが予想されます。
ちなみに、世間を騒がせている大手中古自動車販売会社にかかわる一連の不祥事が一面に取り上げられることはありませんでした。世間的な関心を集めるニュースであっても「日本経済全体に与えるインパクトは少ない」という新聞社の判断が働いたのではないかと想像できます。
**一面の集計は埼玉県内の配達(基本的に13版)記事を対象にしております。
文責:三星剛