どうなる暦年課税(贈与税)
毎年の贈与を規制する動きがあり、一部では「暦年課税は廃止されるのではないか?」という意見もあります。
事の発端は、昨年12月10日に発表された令和3年度税制大綱の中に、
【資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討】
という文言が入ったことによります。
日本の贈与税は①暦年課税と②相続時精算課税の2つの方法があり、
①暦年課税
一年間に贈与を受けた財産の合計額をもとに贈与税を計算する方法。受贈者ごとに毎年110万円までの非課税枠がある。
②相続時精算課税
60歳以上の父母・祖父母から、20歳以上の子・孫に対し財産を贈与した場合において選択できる方法。贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額は2,500万円。前年以前において既に控除額がある場合はその残額)を控除した金額に一律20%の贈与税がかかる。
つまり、暦年課税を選択して毎年100万円を10年間にわたり贈与しても、贈与税はかからないということになります。
諸外国を比較してみると、米国では一生涯の贈与額と相続財産額に対して一体的に課税する制度となっていますし、ドイツやフランスでは一定期間(それぞれ10年と15年)の贈与額と相続財産額に対して一体的に課税する制度となっています。
しかし日本では原則的に相続税と贈与税を切り離して考えていますので、暦年課税を利用した節税を行なうことが可能となっています。
今後、何らかの形で暦年課税は縛りを受けるようなニュアンスですが、令和3年中の贈与に関しては現行通りとなっております。
それにしても、令和3年度税制大綱の資産課税については、相当悩んで書かれているんだろうなと天邪鬼な部分を感じます。要約すると、
・高齢化に伴い、高齢者に資産が偏在するとともに相続のタイミングが遅くなっている。
・これらの資産を若年者に移行できれば有効的かつ経済活性化が見込める。
・しかし贈与税率が高いので、若年者への資産移行が進まない。
・諸外国のように相続税と贈与税を一体的に考えれば、移転時期を気にしなくなるのでは?
問題は贈与税率が高いところにあるのではないだろうかと考えてしまいます。