最近読んだ本について
こんにちは。税理士法人PLUS-ONEの大川です。
このブログがアップされる3月16日は、所得税の確定申告期限です。事業者の方は、青色申告決算書や収支内訳書を作成されることになりますが、そこでは単に数字をまとめるだけでなく、この一年間に「どのような経費にお金を使ったか」を振り返ってみるのも良いかもしれません。意図した支出、あるいは意図しなかった支出……。「お金の使い方にはその人の人柄が現れる」と私は思っています。
そこで今月は、お金の「使い方」に焦点を当てたこちらの論考を紹介します。
『The Art of Spending Money(お金の使い方の芸術)』モーガン・ハウセル著
日本語では「芸術的なお金の使い方」と訳すべきでしょうか。以前ご紹介した名著『The Psychology of Money』の著者によるエッセイで、前作の続編的な立ち位置として「支出」の側面に絞って深掘りしたものです。もともと著者のブログで紹介されていたものですが、2025年に一冊の書籍として体系化されました。また、以前紹介した『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス著)が、「経験のためにお金を使い切れ!」と背中を押す熱い一冊だったのに対し、本書は「あなたの心が一番穏やかでいられる方法で使いなさい」と、優しく語りかけてくれるような内容です。
本書(エッセイ)の要点は以下の5点に集約されます。
①過去の経験が「使い方」を支配する
貧しい家庭で育った人が急に大金を持つと、見せびらかすような使い方をしたり、逆に極端にケチになったりします。使い方は「知性」ではなく「過去の経験」で決まるため、客観的に正しく使うのは意外と難しいものです。
②「見栄」のための支出は、幸福を生まない
多くの人は他人に成功を誇示するために支出しますが、他人はあなたの持ち物には興味があっても、あなた自身を見ているわけではありません。見栄のための支出は、貯金を減らすだけで尊敬は得られないという、残酷な真実を指摘しています。
③「安らぎ」を買う(Peace of Mind)
効率だけを考えれば、資金はすべて投資に回すべきかもしれません。しかし著者は、あえて「住宅ローンの早期完済」や「多すぎるほどの現金保有」を推奨します。なぜなら、それが「夜ぐっすり眠れる(心の平穏)」という、お金で買える最高の商品だからです。
④支出の「損益分岐点」を知る
ある一定のレベルを超えると、モノを買う喜び(限界効用)は急激に減少します。贅沢を重ねても「慣れ」が生じるだけで幸福度は上がりません。「十分(Enough)」のラインを知ることが、お金を使いこなす技術です。
⑤「時間」という自由を買う
最高の使い道は、高級品ではなく「嫌なことをしなくて済む自由」や「好きな時に好きなことができる自由」を買うことです。これこそが正しいお金の使い方の究極の形です。
振り返ってみれば、私があまりお酒の席に顔を出さないのも、その場所が嫌いなのではなく、自分にとって「もっと優先したいお金と時間の使い道」があるからに他なりません。
「あいつ、付き合いが悪いな」と思わず、そっとしておいていただけると幸いです(笑)。皆様も、確定申告という節目に、ご自身の「お金の使い方の芸術」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。


