誤った節税
税金の支出を抑えたいと思うことは、経営者様にとってごく自然なことだと思います。
弊社開催のセミナーでのアンケートでも、「節税」に関するテーマを希望するお客様は多いです。
弊社でも節税をお客様に提案し、実行する場合がありますが、お客様の中には、自分なりに一生懸命考えて、こんなことは節税になるだろうかと逆に提案される方もおり、その熱心さには頭が下がる思いです。
ただ、中には、節税にならない提案を頂戴するときがあります。
その代表的なものは「借入金を返済したら節税になりますか?」というものです。
これは、経営者様の頭の中で、「お金を使えば節税になる」という誤った認識があるのではないかと思います。確かに、節税の代表的な手法である、
①生命保険に加入する
②月払いを年払いに変更する
③決算賞与を支給する
などは、まさにお金が出ていくものなので、借入金を返済すれば節税になるのではないかと考えるのも、一理あるような気がします。
法人税を減らすにはどうすればよいか。
法人税は、所得×税率によって決定されます。
法人税率は中小企業と大企業とで異なる部分はありますが、これを変更することは出来ません。そのため、所得を小さくしないと法人税は減らないこととなります。
所得とは収益から経費を引いたもので、一般的には利益と言われます。
なので、節税のためには、収益を減らすか、経費を増やすかのどちらかということになります。しかし、節税対策を必要とする場面において、既に確定した収益を少なくする方法はありません。なので、経費を増やすという手段が採用されるわけです。
お金を使うという行動からも確認してみましょう。
お金を使うという行動がもたらす結果を見ると、
①経費が増える
②資産が増える
③負債が減る となります。
節税のためには①でなければなりませんが、借入金を返済するというのは③に該当するため、節税の効果はありません。むしろ納税資金が減ってしまうということになり、やってはいけない対策になります。
また、「借入金を返済する」という以外に、「車を買う」ということを提案される場合もあります。これも上記②に該当するため、節税の効果はありません。経営者様が乗られている車の中には、減価償却が終わっており、買い替えの際に車両売却益が生じてしまう時もあり、これもまた逆効果だったなんて話もあります。
節税対策につきましては、実行される前に専門家に確認されることをお勧めします。
こういう話をお客様にして、ご納得いただけるときもありますが、まだ説明が不十分で納得されない方もいらっしゃいます。そういった時には、この説明も付け加えます。
「お金を借りるときに、その分の法人税増えていませんので、お金を返すときにも法人税は減りません」