事業承継対策
中小企業オーナー経営者の最後の大仕事、それは「事業承継」ですが、中小企業白書によれば中小企業の約4割が、後継者不在によって廃業に追い込まれているというデータがあります。
また、企業業績が良い場合、後継者が受け取る自社株は、売却・換金できないにもかかわらず相続税が高額で、納税資金が足らない場合は資産を売却せざるを得ず、事業を継続できないケースも多々見られます。
そこで、平成30年度与党税制改正大綱において中小企業の事業承継を円滑にするための「事業承継税制の特例」が創設されました
非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例
非上場株式に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例は、以前からありましたが、
- 納税猶予の対象株式は総株式数の最大2/3まで
- 猶予される相続税は対象株式に係る課税価額の80%に対応する額まで
- 承継後5年間は平均80%以上の雇用を維持することが必要
など、適用要件が大変厳しいものでした。
そこで、平成30年度税制改正において中小企業の事業承継を促進するために、10年間の期限付きで以下の要件は緩和された「非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例」が創設されました。
非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例の主な変更点
下記のように適用要件が緩和され、贈与税・相続税の納税猶予を申請しやすくなりました。
改正事項 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
後継者の人数 | 代表者となる1名のみ | 最大3名まで可能 |
対象株式数 | 発行済株式の2/3 | 対象株式数の上限の撤廃 |
納税猶予額 | 対象株式に係る課税価格の80% | 対象株式に係る課税価格の100% |
株式の取得先 | 先代経営者1名のみ | 先代経営者以外からも可能 |
雇用要件 | 5年間平均で贈与等開始時の雇用の8割以上を維持 | 雇用確保要件を満たさない場合でも本特例を適用することが可能 |
譲渡、合併、解散時等の納税猶予額の減免 | 承継時の株価に基づいた納税猶予額 | 売却額や廃業時の株式評価額を基に納税額を再計算し、納税猶予額を下回る場合の差額が減免 |
事業承継税制の特例を受けるには
手順1
「特例承認計画」を作成し、都道府県知事に提出&確認を受ける
ただし、「特例承認計画」は、2023年3月31日までに認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受け作成されたものでなければなりません。
※税理士法人PLUS-ONEは経営革新等支援機関です
手順2
代表者の退任及び新代表の就任を行う
手順3
実際に株式の贈与を行う
手順4
都道府県知事に認定申請を行い、「認定書」を受領する
手順5
以降は「相続」と「贈与」で異なるため、個別にご相談ください
実際の事業承継対策の進め方
1. 現状の認識
事業承継をするにあたり、主に以下の点を確認いたします。
● 会社の経営資源や状況
● 経営者の資産状況
● 後継者候補の有無
2. 事業承継方法と後継者の選定
後継者が既に決まっている場合と、これから選定する場合とありますが、いずれにせよ、下記3つの方法から、どれが自社にとって最適かを多面的に分析&検討します。
(1)親族への承継(親族内承継)
(2)役員や従業員への事業承継
(3)M&A
3. 事業承継計画の立案と検討
事業承継の概要が決まりましたら、それらを事業承継計画として具体的に検討して行きます。
(1)経営権の移譲をどうするか?
(2)いつ、どのように経営権を移すか?
(3)現時点での相続税額の試算と個人資産の移転計画立案
4. 事業承継計画の実施
作成した事業承継計画書に従って、事業承継を実施していきます。
何度も申し上げますように、事業承継には時間が必要です。早めに着手されることを強くお奨めします。
事業承継のことが心配という方や迷っているという方は、税理士法人PLUS-ONEにご相談下さい。経営者様のご希望に合った事業承継対策をご提案させていただきます。